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L'espoir log - 2010年06月

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「桃色春音(提出作品)」桜と君と青空と、

2010/06/19

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春企画「桃色春音」提出作品
この作品は企画に参加してくださった方が提出された作品です。
著作権は作者様にございます。無断転載・複製などの行為はご遠慮下さい。
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 『桜と君と青空と、』 姫月白逢さま




 ふわり、と桜の花びらが千歳の頭上を待った。
 今日は、千歳の高校の入学式だった。一年間の努力の結果、入学できた高校は進学校と評価されているものの、教師や先輩、学校全体の雰囲気はとても和やかなもので、高校見学に来た際、絶対ここに進学するのだと千歳は強く心に決めた。それから彼女は今までとは比べ物にならないほどの勉強を重ね、三年生当初には入れる訳がない、と中学の教師に呆れられていたこの高校に入学できたのだ。

(すっごく、気持ちが良い朝……)

 千歳が空を見上げると、そこには雲一つない青空が広がっていた。まるで空までもが自分の入学をお祝いしてくれているようで、千歳はそっと口元に笑みを浮かべる。
 ふと、視線を前方へと戻せば、高校の正門が視界に入った。あの門を通った瞬間から、千歳の高校生活が始まるのだ。
 千歳はぐっと拳を握りしめて、今にも駆け出しそうな勢いで正門へと向かった。

(私の、高校生活、どうなるかな)

 沢山の希望と、少しの不安を胸に、千歳が正門を通ろうとしたとき、誰かにぐいと手首をひかれた。急なことに千歳は目を丸くしながら、数歩よろける。しかし倒れないようにぐっと踏ん張ると、振り返った。
 ──そこには、見慣れない顔をした同じ高校の制服を着ている男子の姿が。

(……何、誰、この人)

 頭の上にクエスチョンマークを浮かべながら、千歳はその男子の顔をじっと凝視した。その男子は大きなアーモンドアイを持っており、端正な顔立ちをしていた。──必ず学年に一人はいる、異様にモテる男子のようだな、と千歳はぼんやり思う。
 一方でその男子は頬を微かに高揚させており、口元には笑みまで浮かんでいた。

「……あの、間違ってたら悪いけど、千歳、ちゃん?」

 不意に、男子の口から紡がれた自分の名前に、千歳は目を丸くした。
 なぜ初対面の男子が自分の名前を知っているのだろうか。いや、自分の名前を知っているということは、初対面ではないのだろうか。だとしたら小学生の頃のクラスメイトだった男子なのか。千歳はぐるぐると考えてみるものの、やはり目の前の男子の顔に見覚えはない。
 男子は千歳が自分が誰か思い出せていないのを見透かしているかのように、ふっと目を細め、言った。

「祐哉だよ、祐哉。ほら、幼稚園の頃、いつも一緒にいた祐哉」

 ゆうや。
 千歳はその名前を聞いて、ようやく目の前の男子が誰か、思い出すことが出来た。
 幼稚園のとき、いつも一緒にいる男子がいた。その男子は泣き虫で、いつも千歳の後ろを半ば泣きながら、ついてきた。千歳は自分がいなきゃ駄目だ、と幼心にそう思っており、まるで姉のように、同級生からいじめられている彼を守っていた。しかし彼とは小学校が別々になってしまい、次第に親同士も連絡をとることがなくなって、千歳は今までその男子を思い出したことは、ほとんどなかった。──その男子の名前は、

「祐哉……?」

 千歳の記憶が正しければ、桐谷、祐哉。
 
「そ、桐谷祐哉。すっごい久しぶりだね、千歳ちゃん」

 アーモンドアイの瞳に見つめられて、千歳は軽い目眩を覚えた。これは面倒なことになりそうだぞ、と。
 千歳は曖昧に笑って、祐哉の視線から逃げるように空を扇げば、そこにはやはり、雲一つない青空がそこに広がっていた。




桜と君と青空と、













Fin.

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