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「雪色冬音(提出作品)」雪になった貴方と

2010/12/05 15:38

――――――
冬企画「雪色冬音」提出作品
この作品は企画に参加してくださった方が提出された作品です。
著作権は作者様にございます。無断転載・複製などの行為はご遠慮下さい。
――――――

 『雪になった貴方と』 舞香さま著




 静寂が世界を包む、そんな夜のことだった。
 しんしんと積もる雪にすべての音が吸い込まれて消える。
 目が覚めた少女はゆっくりとベッドから下りた。カーテンの隙間から外を覗いてみても、ひんやりとした空気が頬を刺しただけで何も見えなかった。月は出ていない。雪の日なのだから。
 そっとドアを開けて外に出る。マフラーとコートをしっかり着込んで。雪帽子を被った街灯が心もとない淡い光で少女を誘っていた。
 あぁ、ここで合っている。少女は白い息を吐いた。すぐに消えてしまう吐息の向こうに人が歩いてくるのが見える。

 「おや、こんな時間にどうして君はこんなところにいるんだい?」
 「あなたを待っていたの」
 「それはおかしな話だ。なぜ僕が来ることがわかったんだい?」
 「夢を見たから」
 「夢?」
 「えぇ、夢」

 街灯の下で二人はただ立っていた。すぐ横にあるベンチには雪が積もって座れない。
 彼は厚手の手袋をしていた。少女の手には、何も無い。
 少女は彼の顔を眺める。雪と同じくらい真っ白な顔が、街灯の光でほんのりと照らされていた。

 「それはどんな夢だったんだい?」
 「あなたが私を迎えにくる夢」

 彼は笑った。君が僕を待っていたんだろうと。
 それでもこうして出会ったのだから同じことでしょうと少女は言う。
 ひらひらとした雪が彼の頬を撫でて少女の頭に落ちた。

 「おやおや、こんなに冷えてしまって」

 彼の厚手の手袋が少女の小さな手を包んだ。

 「手袋は嫌いなの」
 「どうしてだい?」
 「触れ合ってる感じがしないもの」

 少女の声が震える。それは少し怯えているようにも見えた。
 彼は少女の頭にうっすらと積もった雪を払ってやりながら、もう一度しっかりと小さな手を優しく包む。
 今夜は静寂が世界を覆う日。

 少女は自分の手が彼のそれと繋がるのを感じた。
 冷たく震える手に温もりが伝わって、そして――
 

 淋しく佇む一本の街灯から、雪帽子が音もなく滑り落ちた。
 雪はまだ止まない。静寂を連れて。


 (凍える心には暖かい雪を、と彼が言った)
 (そんな、気がして)


 ――少女と彼は雪になって散った。




 Fin.

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