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ファンタジスタ

2010/11/06 11:48

【前書きと云う名の反省】


<企画サイト>キウイベアさまに提出した作品です。

11月お題「退廃的・鳥」をモチーフに使ったのですが…
全くもって意味が分からない作品になっていますね(苦笑)

雰囲気作りの勉強になりました。
キウイベアさま、ありがとうございました。


では、ごゆっくりとお楽しみ下さい。


管理人・天乃音羽


 ~*~*~*~*~*~*~


 ふと目を開ければ、天井の模様が全く変わることなくアリスを見返していた。

 アリスは妙に身体が重かったが、しかし何かが気に掛かって、布団を持ち上げた。
 何時もよりゆっくりとした動作で、寝台から降り、何も考えずに、窓際へ向かった。
 アリスが目を覚ました時、空は暗く澱み、つまり夜だった。
 星が瞬いている訳でも、町の明りがついている訳でもない暗闇の中で、アリスが見たのは、不思議な光だった。
 窓越しに見える景色は、とても不安にさせるような、妙なものだった。
 空には月も星も全く無い。雲ひとつ無い、ただの黒い空。活気ある街は見えず、今見えるのは、暗くどんよりとした街だった。
 そのおかしな情景の中に、唯一つ。ポツンと浮かんだ淡い光。
 自己主張をするかのような、まるで心臓が音を立てているかのような、不規則に光る“それ”。
 アリスは、“それ”から目が離せなかった。
 吸い込まれるように、魂を抜かれるように、アリスは窓越しに見詰めていた。
 その時、ふわりと“それ”が揺れた。突然、トクン、トクンと不規則に光り続けたまま、その場所からゆったりと動いたのだ。 
 アリスは思わず、数歩後退った。だが、“それ”から目を離す事はなかった。
 揺らめくように、“それ”は淡い軌道を描いて、アリスの部屋に入ってきた。
 窓は開いていなかった。光は、壁を通り抜けてきたのだ。
 アリスは、“それ”に押し戻されるように、寝台のほうに戻った。
 アリスの目にあるのは、恐怖、不安、怯え。
 目の前に浮いている、“それ”は、アリスに語りかけているかのようだった。


――――アリス、アリス……。貴方を、探して……


 アリスは耳を塞いだ。突然聞こえてきたか細い声に、奥底にあった恐怖が鎌を擡げた。
――――畏れないで……私は、……
 恐怖ばかりがアリスを呑み込んだ。
 目も耳も何もかもを閉ざし、しゃがみ込んでしまったアリス。
 “それ”は、おどけたようにアリスの周りを浮遊した。
――――アリス……
 全てを受け入れる事を拒否し、自分の中に隠れてしまったアリスを、“それ”は慰めるように泳いでいた。
 外の世界は、まるで暗黒だった。
 音も何もかもを忘れてしまったような世界と、全てを拒んだアリス。
 “光”だけが、ただ飛んでいた。
――――アリス、意識を……概念を……
 アリスは、一瞬、世界の拒絶を緩めてしまった。
 その隙間に入り込むかのように、“それ”は姿を変えた。
――――望むとおりに、……


 “それ”は“光”であり、そして“望”で、“願望”であった。


 アリスが見たのは、黄金に輝く、小さな禽だった。
『ありがとう、アリス。貴方に、逢いたかったの』
 アリスは、その禽を見上げて、驚きを隠せずに口を開けた。
「君は、〈導く者〉……」
 黄金の小さな禽は、変わらずにアリスの目の前で飛んでいた。
 アリスは、そっと禽に手を伸ばしながら、ゆっくりとした動作で立ち上がった。
 アリスの手が禽に触れた。だがしかし、その手が物体を掴む事はなかった。
『ワタシは、貴方を〈導く者〉。ありがとう。……さあ、アリス。行きましょう』
 黄金の小さな禽は、ふわりとアリスを中心に一周飛ぶと、まるで〈導く〉ように、窓の外へ飛んでいった。
「おい……」
 アリスは慌てたように窓枠に手をかけた。大きな音を立てて窓を開け放つ。
『貴方には、出来るわ……』
 禽はアリスを待つように、誘うように、ゆらゆらと暗闇に浮いていた。
 アリスは、不安や恐怖をもう感じていなかった。アリスにあったのは、全てに対する諦めと、わずかばかりの好奇心。
 アリスの窓枠に触れている手が、外の冷たさ故か、かじかむように震えていた。
 闇夜が、空虚で暗渠な闇夜が、アリスを誘っていた。
 アリスは、その手に力を込めて、勢いよく虚空へ身を投げた。
『行きましょう、背徳の世界、〈ファンタジスタ〉……』



 ある日、毎朝挨拶を欠かさなかった少年が顔を見せなかったことを不審に思った男性が、少年の部屋に入った。
 男性は部屋に入るなり、何故自分がここにやってきたのか、判らなくなった。
 何かやり忘れているような気もするし、何と無く間違えてここに来てしまったのかもしれない。



 街は、何事もなかったかのように、日常が戻っていた。
 一夜のことなど、まるでなかったかのように。




 Fin.


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