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聖夜の薔薇

2010/11/07 16:00

【後書きと云う名の前書き】


短編集第二章!


ということで、今回のお話は、
クリスマスのお話です。


特にスプラッターな表現はございませんが、
雰囲気的にゴシックが強く主張しているお話となっております。


内容自体は、温まるものを目指したのですが…
いかんせん私の文章力ですので、どうなっているかはご自分の目でお確かめを。


では、ごゆっくりとお楽しみ下さい…。

 管理人・天乃音羽


 ~*~*~*~*~*~*~


○第二章 聖夜の薔薇‐クリスマスローズ‐


 日が暮れてきた。
 鮮やかな蒼色の空は、次第に薄れ、淡く朧な紫色を映し出す。所々に浮かぶ雲は、ほんのりと太陽に照らされ、その月の姿を隠す。優雅にして優美な月の灯が、無造作に人が溢れる街を柔らかく包んでいる。
 賑やかな街の明りが次第に灯る。
 月の色を、空の影を、太陽の名残を、星の耀きを隠すような明りは、やはり雑然とした街を、鮮やかに照らし出した。五月蠅いくらいに明るいその電灯は、まるで当たり前の様に其処に佇んでいた。
 人通りの多い大通り。街の中央を伸びるこの道は、いまや車に埋め尽くされている。帰路につく人々が足早に歩道を駆け抜けていた。
 下を向き、前を向き、俯き気味に、真っ直ぐに前を見詰めて、其々の道を行く人々。周りの人など関係ない。自分だけの道を、ただひたすらに歩み続ける彼らの街は、やはり虚しさが端々に顔を出していた。
 そして、雪崩れのようなその流れに、逆らうように風が吹き付けた。
 無造作に建てられた建物の窓に映る、人々の姿。普遍的な其の光景。その流れの中に、一際目立つ容姿の少女がいた。
 長い金髪を高いところでポニーテールに纏め、其処に揺れるは白のフリルレースがついた、黒のリボン。身体を纏うは、白と黒のドレス。いたるところにフリルをあしらった、可愛らしいもの。それでも其の中に潜む淡い闇色(くろいろ)。
 胸元で光るは銀色に輝く小さな薔薇のネックレス。首元を占めるは黒色でフリルつきのチョーカー。右耳で揺れるは銀色に輝く骸骨のチェーンピアス。
 冷徹さを帯びたその瞳は、蒼く、其の頬は異様に白く、其の唇は異様に緋い。
 いわゆるゴシックロリータの服を身に纏った少女は、まるで其処にいるのが当然だというように、その道を歩いていた。真っ直ぐに見詰められるその蒼い眸。先に聳えるは無限に伸びているのではと錯覚を起こさせるような、長い道。
 擦れ違う人々は、確かに彼女に眼を留める。だが、彼女は気にした様子もなく、ただその横を通り過ぎる。
 少女が纏う異様な雰囲気は、まるで人を拒んでいるかのようだった。
 彼女を避けるように人々は歩き去る。
 少女は、そのドレスを翻し、突然路地裏に消えた。
 大通りから一本はずれただけだというのに、恐ろしく黒々しく、そして物悲しい雰囲気の細道。大通りの人気は、いつの間にか其の闇の中に消えていた。
 少女はドレスとその髪を優雅に揺らして、細道の奥へと進む。明かりの無い薄暗い路地。闇に溶け込むような少女は、其の姿を暗闇に浸透させた。
 カラァン……、カラァン……。
 そんな薄い路地に響き渡る、凛とした可愛らしい鈴の音色。少女は、古ぼけた木製の扉を、静かに、しかししっかりと開け放った。


「いらっ……***ね。お客様がお待ちよ?」


 扉の奥に広がっていたのは、酷くレトロな雰囲気のカフェ。カウンターに立つ女性が、黒い少女に眼を遣ると、優しく微笑みかけて、奥へと促した。
 鷹揚に応じる少女は、促されるままに中へ入った。
 カフェにいる客は、さも当然の様に彼女を受け入れた。誰といってこれといった反応を示すものはいない。
 店内には、クラシック音楽が小さく優しく響いていた。
「待たせたかしら?」
「平気だよ、***。僕も今来たところだからね。ほら、さぁ……」
 少女は店内の奥にある小さなテーブル席に座る、銀髪の少年の元へ歩いた。高圧的な少女の声に、落ち着いた風に返す少年は、少女に座るよう促した。
 少女は席に座ると、軽く右手を上げて、店員を呼び、ストレートの紅茶を頼んだ。店員が去ってから、少女は少年に問うた。
「こんな時間に、何の用かしら?」
「……君はこういうことに疎いからね。今日は何の日?」
 少年は、なんとも形容しがたい微笑みを浮かべて答えた。
 クラシックの音楽が、酷くゆったりと流れている。
 外の大通りの、空虚な喧騒は何処へやら。一本道を隔てた此処は、まるで全ての世界に見放されたような、不思議な空間で満たされていた。
 少女は首を傾げる。その髪とリボンが優雅に微笑む。
「あら、何の日かしら?」
「……聖夜、だよ」
 少年は答えた。
 少年は、手元にあったコーヒーを啜る。その湯気が美しく漂う。
「……私はキリスト信者じゃないわ」
「信者じゃなくたって、特別な日だよ、***」
「そうかしら?……だから?」
 少年が諭すように言うも、物分りの悪い生徒のような少女は、その冷徹な眸をほんのりと細めた。
 紅茶が運ばれた。少女の軽い会釈。店員は、微かに少女の衣装に目を留め、それでも静かに下がっていった。
 少年は、店員が下がるのを見ると、静かに口を開いた。
「おめでとう、***」
「私はイエス・キリストじゃないわ」
「…………」
 間髪いれずに少女は言い返した。少女の眸が激しい嫌悪に歪む。蒼く凛としたの眸は、それでも少年を見詰めていた。
 少年は、そんな少女を見て、それでも優しく微笑って言った。


「今日は、僕の愛する薔薇が咲いた日、だよ」


「…………」
 店内で優しく響いていたクラシックの音楽が、鳴り止んだ。


                                      ~Fin~

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