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「桃色春音(提出作品)」出会い、別れ、そして始まり。

2010/05/21 20:49

――――――
春企画「桃色春音」提出作品
この作品は企画に参加してくださった方が提出された作品です。
著作権は作者様にございます。無断転載・複製などの行為はご遠慮下さい。
――――――

 『出会い、別れ、そして始まり。』 夢羅亜紀様著


*1*

「ねぇ、『春』って言われて思いつく言葉って何?」
私が何気なく尋ねたこの問いに、優子は少し笑ってこう答えた。
「そうね…『別れ』かしら?」

今思えばあの時の優子は満開の桜の下でなんだか少し切なげに笑っていた気がする。
「それじゃあ、桜の『春』は?」

「うーん…いっぱいありすぎて困るかな。考えとく。」
「そう…ねぇ、桜。
私言わなきゃいけないことが…」

その時、優子の言葉を遮って放送が流れた。
「3年2組加藤桜さん。
至急、第3職員室に来て下さい。」

「あ、呼び出しだ。優子、言わなきゃいけないことって?
この前もそんなこと言ってたけど…」

「ううん、いいの。それよりも急がなくて大丈夫?」
「あっ、大変!それじゃあ行ってくるね。
今日は少し用事があるから先に帰ってて。それじゃ!」

私はそう言って優子と別れた。
卒業式の2日前の事だった。

次の日もその次の日も優子とは会わなかった。
クラスも離れているし、仕方なかったと言えば仕方なかったのだけれど…。


*2*

卒業式当日。私は優子を探していた。
優子が言っていた、『言わなきゃいけないこと』というのが気になっていたからだ。

だけど学校のどこを探しても見つからない。
卒業式の間も探していたけれど優子は見当たらなかった。


私が優子を探して廊下を歩いていると、丁度よく優子の担任に出会った。

「すみません、大原さんって今日来ていないんですか?」
「あら、加藤さん。大原さんは来ていないわよ?
加藤さん、大原さんから何も聞いていないの?
大原さん、アメリカに留学するのよ。
昨日も一昨日もその準備で学校へは来ていないの。
卒業式に出られないのをとても残念にしていたわね。
確か、飛行機の時間は3時だったと思うけど…。」

私は先生に軽く挨拶をすると一目散に学校を出た。
今の時間は午後1時。
幸い空港は隣町だったから運が良ければまだ家にいるかもしれない、そんな期待を胸に全力疾走をする。


*3*

優子の家は見晴らしのよい高台にあった。
真っ直ぐな坂を上った上にある。
道の両端には桜の木が軒を連ねるようにして植わっており、春には満開の桜のアーケードを作る。
何度も優子と一緒に歩いた道だ。
私が息を切らせながら坂を走っていると坂の上、つまり優子の家の前に一台の車が止まっているのが見えた。
そしてその近くには見慣れた制服を着た少女、優子の姿があった。
「優子!!」
私は力の限り叫ぶ。
桜の木を見上げていた優子は、はっとしたように私の方へ視線を向ける。
驚いたような表情で。

「…桜。」

私は息も切れ切れに優子の元へ走る。
優子はばつの悪そうな顔で私を見つめていた。


*4*

「桜…私……。」

「はぁ…はぁ…まだ、答えてなかったでしょ?
…この間の質問の答え。」
「え…?」

「私にとっての『春』。
やっぱりたくさんあって一つに決められ無かったの。
でも今、思いついた。
私にとっての『春』は『始まり』。」

「…始まり……桜らしいわね。」
優子はクスッと笑う。
それにつられて私もクスクスと笑った。

「私、手紙書くから。
こっちであったこといっぱい書くから。
だから優子もちゃんとそっちであったこと教えてよね?」

「…うん。」
「優子、そろそろ飛行機の時間よ。」
優子の母親の言葉に従い優子は車に乗り込んだ。

「桜、今までありがとう。
私あっちに行っても桜と過ごした三年間のこと絶対に忘れないから。」

「私も忘れない。…優子、またね。」

『さようなら』ではなく『またね』。
私の言葉に優子は笑顔でこう言った。



「うん、またいつか会う日まで。」



*Fin*

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