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「桃色春音(提出作品)」ある春の日の二人の会話

2010/05/21 22:20

――――――
春企画「桃色春音」提出作品
この作品は企画に参加してくださった方が提出された作品です。
著作権は作者様にございます。無断転載・複製などの行為はご遠慮下さい。
――――――

 『ある春の日の二人の会話』 遥さま著


「ふぅ……こんなもんだな」
 時刻は午後のティータイムから少しばかり過ぎたあたり。客の流れも途絶えたところで、コポコポと沸き立つサイフォンからコーヒーを淹れ一服。明るすぎず暗すぎず落ち着いた色合いの調度品で調えられ、パッヘルベルのカノンが静かに流れる店内での優雅な一時。春先の暖かく柔らかな日差しも差し込んでとても心地よい。

 カランカラーン

「てーんちょ~~景気ど~お~帳簿は真っ赤っか~!?」
 擬音にするとドタドタという具合で失礼な言葉を吐きながらささやかな幸福の一時をぶち壊しにしてくれたのは、この店がオープンして初めてのお客にして学校が終わるとほぼ毎日来ている暇じ――――常連である。ちなみに景気のほうはギリセーフといったところ。こいつのおかげで黒字であると言ってもいいが感謝の言葉を口にすると図に乗るので絶対に言わないことにしている。
「お前のおかげで店に入りたくても入れないやつがいて迷惑だから今すぐ帰れ」
「!? ガ――ン!! お客に対して帰れってお前何様だー!」
「店長様ですが何か?」
「くっ……店の経営も思った以上に伸びなくて、可愛い看板娘を雇ってその娘と恋愛イベントを起こしたくても起こすことのできない二十代後半の夢見る男性がフレッシュでスタイルもイイ女子校生というブランドを持つ美少女に対して何の劣情も持たず冷たくするなんて…………」
「お前の頭は大丈夫か?」
 確かにそこいらの女子と比べると(黙っていれば)カワイいとは思うがそれを自分で言うだろうか?
「はっはっはぁ~学年トップ、全国模試一桁の成績を誇るこの私の頭のどこが異常だと~愚民がぁ~」
 疲れる…………一日の疲れの九割以上がコイツのせいなんだがどうしたらいいだろうか? 医者に『ナントカと天才は紙一重な客のせいで精神的に疲れて毎日来るもんだから疲れが取れません』と言うべきか?
「おぉーい店長、溜息吐くと幸せ逃げちゃうぞー?」
 幸せを逃がしてしまう原因が何を言うか。
 外の景色でも見て癒されようと窓の外に目を向けると、学校帰りの学生がちらほら。どこにでもいる学生だが制服に着られている感じがするからおそらく入学したばかりだろう。桜の舞い散る並木道を歩くその姿は初々しさに満ち溢れていた。
「そういやお前もあんなんだったよなー」
「んにゃ、何が?」
「初めて会った時は物腰柔らかくて初々しかったのに悪質な詐欺だよなぁ」
「メチャクチャ失礼ッスよ。初対面の人に猫被るのは社会で必要なんだよー」
「そのわりには化けの皮剥がれるのメッチャ早かったよな」
 何せ出会って五分も経たないうちに今の調子を全開にしやがったからな。あまりの落差に言葉を失っちまったぜ。
「いや、店長になら本当の自分を見せても大丈夫だな~って思ったから素の自分を曝け出したんだけどね~――――――――ごめんね、私店長と一緒にいるととても嬉しくって……迷惑だった?」
「とりあえずその小芝居はヤメロ寒気がする」
「ちっ」
 はいそこ舌打ちしない。
「とりあえず客として来てるならなんか注文しろ、じゃなきゃ帰れ」
「それじゃ、チョコパフェバナナパフェ抹茶パフェストロベリーパフェマンゴーパフェチーズパフェヨーグルトパフェプリンパフェモンブランパフェミルフィーユパフェティラミスパフェドリンクは砂糖たっぷりミルクたっぷりのココアよろ~――――」
 ………………太るぞ。
「あ、私太らない体質だから無問題~」
「人の心の中読むなよ」
「にゃははぁ~それじゃ、よろしく~」
 注文を受けて厨房に立つ。グラスをいくつも用意するのめんどいな…………バケツにクリーム入れて具材突っ込めばいいかな。
「てーんちょーメンドクサイからって一つに纏めるのはダメッスよ~一つ一つグラスを空にするたびに味わえる征服感がいいんだよ~」
 あー…………作るのめんど。ささやかな嫌がらせでカカオ99%のチョコパフェを出す。ふっふふ、苦しみやがれ。
「てんきゅー&いっただきまーす――――――――おぉ! うめぇー! この苦さとクリームの甘さがなんともいえねえ~」
 ペースの下がることなくもきゅもきゅごくごく口を動かし続ける。無敵かコイツ?
「っていうかお前毎日来てるけどテーブル陣取って就職とか進学に向けて勉強したりするわけでもなく、ただ騒音を撒き散らしてるだけで進路大丈夫か?」
「んぐんぐ――――ぷはぁ、勉強なんて学校できちんと授業聞いてれば十分でしょ?」
 うわ、でたよ優等生発言。
「とりあえず進路はここに就職希望なんだけどいかが?」
「却下」
「それじゃあ、店長のお嫁さん希望ってことで」
「断る」
「えー、じゃあセフレでいいよー」
「進路じゃなくて関係になってんだろがマジメに答えろマジメに」
「や、マジッスよ。店長いつも私の真剣な告白をスルーしてくれちゃってさ~毎夜枕を涙で濡らしちゃってるんすよわたしゃ」
 真剣? あれが?
「真剣に告白するなら言葉使いナントカしろ」
「――――初めて店長と会った時から好きでした。私と付き合ってください!」
「うん、だが断る」
「ちょ――! お前ふざけんなああぁぁぁ!!」
「誰も付き合うとは言ってないだろ」
「乙女の純情弄びやがってコンチクショー!」
 何てからかいがいのあるヤツなんだろう。楽しいな。
「はああぁぁぁ…………婚活パーティーに行って出会いがあってもその場限りになってしまって女に飢えているはずなのにそんなに冷たくするなんて……はっ! もしかして店長そういう趣味かっ!」
「お前黙れ」
 それになんで俺の婚活パーティーでの出来事を知ってるんだ?
「店長私に対して素直になれないからってそんなに冷たくし続けてたら親密度低いまま卒業して二度と会うことのないバッドエンドになっちゃうよ?」
「はいはい。パフェ全部食い終ったならとっとと帰りな」
「こいつひでぇ~~こんなヤツぜってぇ結婚できねえぜぇ。私以外に恋愛イベント起きることがないと身を持って知るがいいさぁ!」
 そんな捨てゼリフを置いて店から出て行く。きっちり注文した食べ物の料金を払うあたりしっかりしているな。
「…………ふぅ」
 さっきまで騒がしかっただけに静けさがより際立ってしまう。気がつけば夕方、オレンジ色の風景の中で舞う桜の花弁には華々しさはなく物悲しさがあった。
 …………あと一年で卒業か……あいつが来ることが日常になってたんだなぁ。
 まぁ、たまに思いだして来て駄弁ってくれたらいいかな。

 さて、空いたグラスでも洗うか。それから、生クリームとか作り置きしなきゃいけねえな。

end.


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