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The blue-bird.

2010/11/14 21:32

この作品は、【企画サイト】キウイベアさまに提出させていただいた作品です。

11月お題〈温もり・鳥〉をモチーフに、第二弾の小説を書かせていただきました。


私の長編作品「春色の香」の主人公の話なのですが、本編で出てきてない彼(彼ら)を描いてしまったので、
なんだか微妙なのですが…。

本編ではなかなか書けない彼(彼ら)の性格を、感じていただけると嬉しいなぁなんて(笑)
まだ本編に出てこないのに何言ってんだって感じですが。。


お題にそって、暖かいお話を目指しました。
キウイベアさま、ありがとうございました。


では、お楽しみ下さい…。


管理人・天乃音羽


 ~*~*~*~*~*~


  「The blue-bird」



 春風大和は、明神学園の雄大な森を歩いていた。
 明神学園は巨大な“学校”で、校舎は計五つ。円を描くように並んだ校舎たちを、広大な森が囲っているという、あまり見ない不思議な“学校”だ。
 秋の風物詩らしく、森の木々は赤く染まり、その葉をまるで絨毯のように大地に広げていた。
 カサッと、小気味いい乾いた音が、大和が歩くたびに響く。色鮮やかに色づいた落ち葉は、落ちた今でもその生命を主張しているようだった。
 今の時間、高等部生徒は授業はない。各々部活・サークルまた委員会などの活動に勤しむか、帰宅するかだ。
 大和は文芸部所属だったが、今日は定休日。サークルには参加せず、委員会は第二生徒会所属だが、第二という名前通り、その活動はほとんどない。
 よって大和は、誰も来ないような偏屈な森の中で歩いていたのだ。
――――なんか……悲しいな。
 大和は物悲しげな雰囲気を孕んだ木々たちを見上げて、そう思った。
 大和がここに来た理由は、特に明確に決まっているわけではなかった。ただ、一人自室の寮に戻るのもつまらないと思ったし、何より第二生徒会室にいるのが、窮屈に感じられたからだ。第二生徒会室には“あの”いつもの面々が揃っているはずだが、大和はなんとなく、其処へ入るのを躊躇った。
――――やっぱ、たまには外に出るべきだよな。
 勝手に心中で自己完結を終えると、大和は再び意識を外へ向けた。
 太陽の光は淡く、仄かに空を赤色に染めていた。だが、完全な暗闇へと世界を誘うには、少々早すぎるようだった。
 大和は、ただ森の中を歩いた。
 いつも好んで行う、回想を意識的に遮断し、大和は無心に辺りを歩いていた。
 見上げれば広がる、様々な色合いを見せる木々の葉。
 完全に赤く染まったものは、今にも落ちそうに、時折吹く風に揺られている。淡い赤色の葉は、まだ元気だぞと言い張るかのように、堂々としている。黄色く色づく葉は、若々しさを孕み、まだ青い葉は、瑞々しい生命を宿しているかのようだった。
――――でも……、一人は寂しいな。
 大和は微かに表情を翳らせた。
 木々を見上げる瞳は思案気で、葉に手を伸ばすその姿は、どこか儚く、風に浚われてしまうかのような危うさを持っていた。


 普段から大和の周りには、あの四人がいた。
 破天荒な女子生徒の永田稔は、第二生徒会会長の大和を酷く弄ぶのが好きだった。
 冷めているようでどこか熱情的な男子生徒の巻神優は、友人として大和と会話を弾ませていた。
 不思議で天然な女子生徒の氷山白狐は、生徒会役員として大和を慕う。
 無感情で無表情を貫く男子生徒の荒芝坂奇跡は、それでも大和に一目置いていた。



 いつでも彼らは大和の傍に居る。嫌だといえば離れてくれたし、望んだ時には気がつくとそこにいる。



 大和は、自らが感傷に浸っている事を知って、しかしそれを止めようとは思わなかった。
――――なんか、……違うんだ。
 大和には、その答えは見えなかった。見つけようとは思ったが、見つかるとは思わなかったし、見つけてくれると信じていた。
 彼が見ているのは、答えではなかった。彼が見ていたのは、ただ無情に広がる赤色の森だけだった。
 それは、何もない、動物の何もいない、白々しい森だった。
 染まった葉は、生命感を漂わせて生き生きと風に揺られている。だが、どこか哀愁を孕んでいた。



「…………っ!」



 大和はまず、自分が外界に意識を向けていなかった事に、酷く驚いた。幾ら考え事に没頭しようとも、彼は探偵の性か、その注意を怠った事は無かったからだ。
 そして彼は、自分の見たものに驚いた。
 彼がその目で見たのは、素晴らしく蒼い鳥だった。
 何もいないと思った森の中で見た鳥は、その姿がとても鮮明で、大和を酷く驚かせた。
 だが大和は自分の勘違いに、思わず笑った。
――――森に、動物がいない訳ないよな。
 大和は、自分が物凄く愚かなことを考えた事に、再び嘲笑を洩らした。
 あくまでここは、明神学園の敷地内で、校舎には生徒たちがいるという、普遍的な森だ。そんな場所に、一匹たりとも動物がいないはずがない。
 大和は、そんな当たり前な理屈を分かっていた。だが彼は、葉の隙間からこちらをじっと見ている蒼い鳥を見て、違和感を覚えた。
 蒼い鳥は、ただひたすらに真っ直ぐ、大和を見ていた。まるで何かが鳥に宿っているかのように、蒼い鳥は、大和の視線を捕らえて放さなかった。
――――鳥、だよな……?
 蒼い鳥は、全く動かなかった。赤や黄色に染まった葉の影から、そっとこちらを窺うような鳥の姿。鳴き声も、身動き一つしない蒼い鳥。
 白々しいと思っていた森の中に、一点だけ宿った本当の生の姿に、大和は合点が言ったように微笑んだ。


「戻るか」


 大和はその蒼い鳥から目を離し、今まで歩いてきた道をゆっくりと辿っていった。


 蒼い鳥は、大和が見えなくなると同時に、その羽を広げ、枝から飛び立った。




 Fin.

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